ハワイでの生活に慣れてくると、「現地で働いてみたい」「英語を使った仕事に挑戦したい」と考える方も多いのではないでしょうか。しかし、実際に行動に移そうとすると、「どんな手続きが必要なのか」「英語力に自信がなくても大丈夫なのか」「どこで求人を探せばいいのか」など、様々な疑問や不安が浮かんでくるものです。
本記事では、実際にハワイで就労許可を取得し、現地で仕事を見つけて働いた筆者の実体験をもとに、ハワイでの就職活動の全プロセスを詳しく解説します。これからハワイで働きたいと考えている方にとって、具体的で実践的な情報を提供できればと思います。
ハワイで働くための第一歩:就労許可(EAD)の基礎知識
就労許可証(EAD)とは何か
アメリカ、そしてハワイで合法的に働くためには、Employment Authorization Document(EAD)と呼ばれる就労許可証が必要不可欠です。これは単なる形式的な書類ではなく、アメリカ国内で収入を得るための法的な権利を証明する重要な公式文書です。
重要なのは、アメリカへの入国を許可するビザを持っているだけでは、自動的に就労する権利が得られるわけではないという点です。ビザの種類によって就労許可の申請可否や条件が異なるため、まず自分の持っているビザが就労許可申請の対象となるかを確認する必要があります。
EADが申請可能な主なビザの種類
就労許可が申請できる代表的なビザには、以下のようなものがあります。
- J2ビザ:交流訪問者プログラムの主申請者の配偶者や扶養家族に発給されるビザ
- L2ビザ:企業内転勤者の配偶者や21歳未満の未婚の子供に発給されるビザ
- F1ビザ:留学生向けのビザで、OPT(Optional Practical Training)制度を利用することで就労が可能
- その他の特定条件を満たすビザ保有者
このように、ビザを保有していることと、就労する権利を持っていることは別物です。合法的に働くためには、必ず就労許可を取得する手続きが必要になります。
実体験:英語の壁と戦いながらのEAD申請プロセス
申請準備の苦労と学び
筆者の場合、保有していたビザが就労許可を比較的取得しやすいタイプだったため、まずはEADの申請手続きから始めることにしました。しかし、周囲に同じ経験をした人がいなかったため、情報収集から申請書類の作成まで、すべて自力で進める必要がありました。
主な情報源は、USCIS(United States Citizenship and Immigration Services:米国移民局)の公式ウェブサイトと、実際に申請を経験した人々が書いた英語のブログでした。法律用語や専門的な表現が多く、英語の書類と格闘する日々が続きましたが、一つ一つ丁寧に調べながら申請書を完成させました。
申請から許可までの期間
多くの情報源では「EADカードの到着まで数ヶ月かかる」と記載されていたため、長期戦を覚悟していました。しかし、実際に申請してから約1ヶ月でカードが手元に届き、予想よりもはるかにスムーズに進んだことに驚きました。
ただし、これは個々のケースや申請時期によって大きく異なるため、一般的には余裕を持ったスケジュールで準備することをおすすめします。
EAD申請の具体的な手順とポイント
就労許可の申請は、以下のステップで進めていきます。
- USCISの公式ウェブサイトにアクセス:オンラインでの申請が基本となります
- I-765フォームの記入:就労許可申請の正式な書類です
- 必要書類の準備:パスポート、現在のビザ、I-94(出入国記録)、証明写真、申請料金の支払い証明など
- 申請書類の提出:オンラインまたは郵送で提出
- 申請状況の確認:USCISのウェブサイトで進捗状況を随時チェック可能
英語に不安がある場合や、複雑なケースの場合は、移民法を専門とする弁護士や、コミュニティの移民サポート団体に相談することも有効な選択肢です。
就労許可を待つ間にできる準備:ハワイの求人市場リサーチ
効果的な求人情報の探し方
EADカードの到着を待つ間も、仕事探しの準備は十分に進められます。筆者はこの期間を利用して、ハワイの求人市場について徹底的にリサーチしました。
実際に活用した求人情報源は以下の通りです。
オンライン求人サイト
Indeed Hawaiiは、最も効率的に求人情報を収集できるプラットフォームでした。英語での検索が必要ですが、職種、勤務地、雇用形態などで細かく絞り込めるため、自分の条件に合った仕事を見つけやすいです。キーワード検索機能を使えば、「Japanese」「bilingual」などの条件で日本語スキルを活かせる仕事も探せます。
企業の公式ウェブサイト
特にレストラン、カフェ、ホテルなどのホスピタリティ業界では、自社のウェブサイトに採用ページを設けていることが多いです。気になるお店や企業があれば、直接ウェブサイトをチェックすることで、求人サイトには掲載されていない情報を得られることがあります。
店頭の求人掲示
ハワイでは今でも、カフェ、スーパーマーケット、ショッピングセンターなどに「Now Hiring(求人中)」や「Help Wanted(スタッフ募集)」といった張り紙が掲示されることがあります。これらのローカルな求人は、オンラインには掲載されないこともあるため、実際に店舗を訪れることで見つかる貴重な機会です。
コミュニティ掲示板とSNS
日本語コミュニティの掲示板やFacebookグループなども、日本人向けの求人情報が集まる場所です。特に日本語能力を重視する職場の情報が見つかりやすいです。
筆者が検討した職種
筆者は主に、スーパーマーケットのキッチンスタッフやカフェのスタッフなど、飲食・小売業界の求人を中心に検討しました。これらの業界は比較的求人が多く、英語に完全に自信がなくても挑戦しやすい環境でした。
アメリカ式履歴書(レジュメ)の作成方法
日本との大きな違い
ハワイを含むアメリカでの就職活動では、日本の履歴書とは全く異なる形式の「レジュメ(Resume)」を作成する必要があります。日本の履歴書に慣れている方にとっては、最初は戸惑うかもしれません。
最も重要な違いは、個人情報の取り扱いです。アメリカでは雇用における差別を防ぐため、以下の情報をレジュメに記載することは一般的ではなく、むしろ避けるべきとされています。
- 顔写真
- 年齢・生年月日
- 性別
- 配偶者の有無
- 家族構成
- 国籍(就労資格がある旨の記載は可)
代わりに重視されるのは、スキル、経験、実績です。採用担当者は、応募者が職務に必要な能力を持っているかを、純粋に職務経歴とスキルから判断します。
Canvaを使った簡単レジュメ作成
筆者は、オンラインデザインツール「Canva」を使ってレジュメを作成しました。Canvaは無料で利用でき、アメリカ式レジュメの豊富なテンプレートが用意されているため、デザインの知識がなくても、プロフェッショナルな見た目の履歴書を簡単に作成できます。
効果的なレジュメの構成要素
アメリカ式レジュメには、一般的に以下の要素を含めます。
1. 基本情報(Contact Information)
- 氏名
- 電話番号
- メールアドレス
- 住所(市と州程度でOK)
2. 職務目標(Objective)または要約(Summary)
簡潔に、どのような職種を希望し、どのような貢献ができるかを2〜3文で記載します。
例文:
“Motivated and bilingual professional seeking a customer service position in Hawaii. Dedicated to providing excellent service and contributing to a positive team environment with strong communication skills in both Japanese and English.”
3. スキル(Skills)
職務に関連する具体的なスキルを箇条書きで記載します。
- Bilingual: Fluent in Japanese and conversational English
- Customer Service Excellence
- Teamwork and Collaboration
- Flexibility and Adaptability
- Basic Computer Skills (Microsoft Office, POS systems)
4. 職務経歴(Work Experience)
最新のものから順に、職場名、役職、勤務期間、主な職務内容を記載します。具体的な実績や成果があれば数字を使って示すと効果的です。
5. 学歴(Education)
学校名、学位、卒業年を記載します。
レジュメ作成のポイント
- 1ページに収める:経験が豊富でない場合は特に、簡潔にまとめることが重要
- 読みやすいフォントとレイアウト:Arial、Calibri、Times New Romanなどの標準的なフォントを使用
- アクションワードを使う:Managed、Developed、Assisted、Achievedなど、動詞を使って能動的に表現
- 応募する職種に合わせてカスタマイズ:求人内容に合わせてスキルや経験の強調点を変える
応募から面接までの実体験
応募の実績と結果
筆者は、条件に合う4つの職場に応募しました。その結果、2件から面接の連絡があり、最終的には両方から採用のオファーをいただくことができました。複数のオファーを得られたことで、勤務時間や職場環境など、自分のライフスタイルに最も合った選択ができました。
ハワイの面接文化
ハワイでの面接は、日本と比較すると非常にカジュアルでフレンドリーな雰囲気です。堅苦しい質疑応答というよりは、リラックスした会話の中でお互いを知るというスタイルが一般的です。
よくある面接質問
- “Tell me about yourself.”(自己紹介をしてください)
- “Why do you want to work here?”(なぜこの職場で働きたいのですか?)
- “What experience do you have?”(これまでどんな経験をしてきましたか?)
- “What are your strengths?”(あなたの強みは何ですか?)
- “When can you start?”(いつから働けますか?)
面接成功のためのアドバイス
服装
スマートカジュアルが基本です。完全なスーツである必要はありませんが、清潔感があり、きちんとした印象を与える服装を心がけましょう。飲食業やリテール職の場合は、過度にフォーマルすぎる必要はありません。
態度とコミュニケーション
ハワイの職場文化では、明るさと親しみやすさが重視されます。笑顔で、アイコンタクトを保ちながら、ハキハキと話すことが好印象につながります。
英語力について
完璧な英語を話せる必要はありません。重要なのは、コミュニケーションを取ろうとする意欲と姿勢です。言葉に詰まったり、理解できないことがあれば、正直に “Could you please repeat that?”(もう一度言っていただけますか?)や “I’m not sure I understand. Could you explain?”(よく理解できなかったので説明していただけますか?)と尋ねることは全く問題ありません。
準備すべきこと
- 応募先の企業や店舗について事前にリサーチする
- 自己紹介を英語で練習しておく
- よくある質問への回答を準備する
- 質問リストを用意する(面接の最後に “Do you have any questions?” と聞かれることが多い)
ハワイでの仕事探しを成功させるための重要ポイント
英語力は完璧でなくても大丈夫
多くの日本人が最も不安に感じるのが英語力です。しかし、実際には完璧な英語を話せなくても働ける職場は多くあります。特に日本人観光客が多いハワイでは、日本語が話せることが大きなアドバンテージになる職場も少なくありません。
重要なのは、間違いを恐れずにコミュニケーションを取ろうとする姿勢です。働きながら英語力は自然と向上していきます。
複数の情報源を活用する
オンライン求人サイトだけでなく、以下のような多様なチャネルを組み合わせることで、より多くの機会に出会えます。
- 求人サイト(Indeed、Craigslist、LinkedIn)
- 企業の公式ウェブサイト
- 店頭の求人掲示
- 友人や知人からの紹介
- コミュニティイベントやネットワーキング
- SNS(Facebook、Instagram)
レジュメはシンプルかつ明確に
過度に装飾されたレジュメよりも、読みやすく、要点が明確なレジュメの方が好まれます。自分の強みと経験を簡潔に伝えることに集中しましょう。
直接訪問も効果的
特に小規模な店舗やレストランでは、直接訪問してレジュメを渡すことも有効です。「Now Hiring」の看板が出ていなくても、マネージャーに「求人はありますか?」と尋ねてみる価値はあります。直接会うことで、人柄や熱意を伝えやすくなります。
ネットワークの力を活用
すでにハワイに住んでいる友人や知人がいれば、職場の情報や紹介を得られる可能性があります。日本人コミュニティのイベントやグループに参加することも、情報収集とネットワーク構築に役立ちます。
ハワイで働く前に知っておくべき重要事項
就労許可は絶対に必要
どんなに短期間であっても、どんなに少額であっても、就労許可なしに働くことは重大な移民法違反です。将来的なビザ申請やアメリカへの入国に深刻な影響を及ぼす可能性があります。必ず合法的な手続きを踏んでから就労を開始してください。
給与と待遇の違いを理解する
アメリカの労働環境は日本と多くの点で異なります。
時給制が基本
多くの職種では時給制で、ハワイの最低賃金は2024年1月から$14.00となっています(2025年10月現在も$14.00)。今後は2026年1月に$16.00、2028年1月に$18.00へと段階的に引き上げられる予定です。レストランなどのチップをもらえる職種では、基本時給が低く設定されている場合がありますが、チップを含めた総収入が最低賃金を下回ることはありません。
チップ文化
サービス業では、チップが収入の大きな部分を占めることがあります。ウェイター、バーテンダー、ホテルスタッフなどはチップによって実質的な収入が大きく変わります。
税金と控除
給与からは連邦税、州税、社会保障税などが控除されるため、手取り額は額面の70〜80%程度になることが一般的です。
健康保険
フルタイムの従業員には健康保険が提供されることが多いですが、パートタイムでは提供されないことが一般的です。自分で保険に加入する必要がある場合もあります。
職種による英語力の要求レベル
職種によって必要な英語力は大きく異なります。
- 高い英語力が必要:接客業(ウェイター、販売員)、電話対応、事務職
- 中程度の英語力でOK:キッチンスタッフ、ハウスキーピング、工場勤務
- 日本語が活かせる:日本人向けツアーガイド、日系企業、日本食レストラン
労働文化の違い
ハワイを含むアメリカの労働文化は、日本とは異なる点が多くあります。
- ワークライフバランス:プライベートな時間が尊重され、残業は必ずしも美徳とされない
- コミュニケーションスタイル:直接的で率直なコミュニケーションが好まれる
- フレキシビリティ:シフト制が多く、勤務時間の調整が比較的柔軟
- At-Will Employment:多くの場合、雇用主も従業員も、理由を問わず雇用関係を終了できる
よくある質問(FAQ)
Q1: 英語がほとんど話せなくても仕事は見つかりますか?
A: 職種によっては可能です。キッチンスタッフ、清掃員、工場勤務など、最低限のコミュニケーションで業務ができる職種もあります。ただし、英語力があった方が選択肢は広がります。
Q2: 就労許可の申請にはどれくらい時間がかかりますか?
A: 個々のケースによって大きく異なりますが、一般的には1〜5ヶ月程度です。筆者の場合は約1ヶ月でしたが、これは比較的早いケースです。余裕を持ったスケジュールで計画することをおすすめします。
Q3: ハワイの平均的な給与はどれくらいですか?
A: 職種や経験によって大きく異なりますが、最低賃金は$14.00/時給です。サービス業の場合、チップを含めると$20〜30/時給程度になることもあります。ただし、ハワイは生活費が高いため、日本の感覚とは異なる場合があります。
Q4: パートタイムとフルタイムの違いは?
A: 一般的に、週30〜35時間以上の勤務がフルタイム、それ以下がパートタイムとされます。フルタイムの場合、健康保険や有給休暇などの福利厚生が提供されることが多いです。
Q5: 面接で何を準備すべきですか?
A: レジュメのコピー、就労許可証(EAD)、身分証明書(パスポートや州発行のID)、社会保障番号(持っている場合)を持参しましょう。また、自己紹介と志望動機を英語で説明できるように練習しておくことをおすすめします。
まとめ:準備と行動がハワイでの就職成功のカギ
ハワイで働くという目標を実現するためには、いくつかの重要なステップを確実に踏む必要があります。
- ビザと就労資格の確認:自分の保有するビザで就労許可が申請できるかを確認
- EADの申請と取得:必要書類を準備し、USCISに申請
- 求人市場のリサーチ:様々な情報源を活用して求人情報を収集
- レジュメの作成:アメリカ式の履歴書を準備
- 積極的な応募:複数の職場に応募し、機会を広げる
- 面接の準備と実践:英語での面接に備え、自信を持って臨む
筆者も最初は英語力に不安を抱え、アメリカの就職活動の進め方も分からない状態からスタートしました。しかし、一つ一つ情報を集め、必要な手続きを進め、積極的に行動することで、実際に現地で仕事を得ることができました。
完璧な英語力や豊富な経験がなくても、「ハワイで働いてみたい」という意欲と、そのために必要な準備をする姿勢があれば、チャンスは必ず訪れます。この記事が、ハワイでの就職を目指す皆さんの第一歩を踏み出す助けになれば幸いです。
ハワイでの新しいキャリアに向けて、ぜひ挑戦してみてください。
次のステップ:実際に働き始めてからの体験
就労許可を取得し、仕事を見つけるまでのプロセスについて詳しく説明してきましたが、実際に働き始めてからも新しい発見や学びがたくさんあります。ハワイの職場文化、同僚との関係構築、日々の業務で直面する課題など、実体験に基づいた情報は次回の記事で詳しくお伝えする予定です。
これからハワイでの就職を目指す皆さんにとって、この記事が具体的な行動計画を立てる助けとなり、夢の実現に一歩近づくきっかけになることを心から願っています。
関連リソース
公式機関
- USCIS(米国移民局):就労許可申請の公式情報源
- ハワイ州労働局:労働法、最低賃金、労働者の権利に関する情報
求人サイト
- Indeed Hawaii:ハワイの総合求人サイト
- LinkedIn:プロフェッショナル向けネットワーキングと求人
- Craigslist Honolulu:地元の求人情報が豊富
コミュニティリソース
- 日本人コミュニティの掲示板やFacebookグループ
- 日系企業の情報サイト
- 現地の移民サポート団体
最後に:一歩を踏み出す勇気を
海外で働くということは、確かに大きな挑戦です。言語の壁、文化の違い、慣れない環境での生活など、不安要素は数多くあります。しかし、その挑戦を乗り越えた先には、かけがえのない経験と成長が待っています。
ハワイという美しい島で、多様な文化に触れながら、英語を使って働く経験は、あなたの人生を豊かにする貴重な財産となるでしょう。完璧な準備ができるまで待つのではなく、できることから少しずつ始めてみてください。
この記事で紹介した情報が、あなたのハワイでの就職活動を成功に導く一助となれば、これ以上の喜びはありません。皆さんのハワイでの新しいキャリアが、充実したものになることを心から応援しています。
次回予告:次回は「ハワイで実際に働いてみて分かったこと」をテーマに、職場での日常、同僚との関係、直面した課題と解決方法など、より実践的な内容をお届けします。お楽しみに!